SHAKKAZOMBIE “空を取り戻した日” from HERO THE S.Z.

「空が気になり 眠れない 眠るフリもできない

これ以上本当の言葉 人任せにはできない」

日本では梅雨が本入りし、連日雨の気が漂い、少しずつ温度が上がっていく6月。

僕は友人に一本のビデオを見せられ、駆り立てられた心と身体はノルウェーはオスロへと向かっていた。

オスロ、北欧はノルウェーの首都であり多くの緑と海に囲まれた人口66万人ほどの小さな街。”叫び”の作者ムンクが生まれた土地として有名。

空港に降りて、ローカルトレインNSBを使い市街地まで向かう。車窓から見える雄大な自然とたまに見えるグラフィティがこれからの旅の期待を煽ってくれた。

ホテルに着き身支度を済ませ、外に出る。

legalもillegalもグラフィティだらけのこの街は歩いてるだけで美術に関する関心が高いということが分かる。

市内にある美術館も無料で入れる場所が多い。

近場の図書館に入ると、いちいちフリーペーパーがイケてて環境に嫉妬した。

街を行く人々、無造作に貼られたポスター、ショップに置かれたチラシ、軒を連ねるコーヒーショップ、そのどれもがダサいものを許さないような気がして街全体のかっこよさに「僕はこの場に存在していて大丈夫だろうか」と慄きながらその日は床についた…

…朝起きて身支度を済ませホテルの売店の安いカップコーヒーを買う。

街に繰り出す人を横目に一服する。

この日は全員黒のコーチジャケットを着ていた。

朝食を軽く済ませ、ヴィーゲラン彫刻公園に向かう。絡み合う人間の塔、モノリッテンは僕の頭に社会の縮図のようなものを浮かび上がらせる。

市内の美術館に入るとダビデの”考える人”、ムンクの”叫び”、などなど、教本でしか見たことのないものにいくつも触れることができた。

Alex Israelの個展では、インタビューをぼんやり見ていたが、英語がそこまでできない僕は雰囲気だけ感じ取ってその場を後にした。

夜は近くのクラブに足を運んだ。

ここでシンゴさん、floox、現地のbboyと知り合い、マヤにも再会できた。ポーランドのみんなを思い出して少し泣きそうになった…

…前日と同じくロビーの安いコーヒーで一服を済ませると、一人で出かけてみた。

大小いくつものボートが停泊している海沿いを歩いていると海岸にはカップルや家族連れ、ストリートミュージシャン、物乞いなどがそれぞれの昼下がりを過ごしていた。

時間はゆったりと流れ、東京の喧騒とは反対の位置に存在するこの場所は自分という人間を振り返るのに最適だった。

宿に戻り、皆と集合してTorbに会いに行く。

ムンクの憩いの場であったEkebergの丘でセッションが始まる。iPhoneから流れるレアグルーブはでかいサウンドシステムを通してその場を妖しく彩っていた。

ジョイントを少し吸い込みワンムーブ、踊りきった後はビールを少し飲む、その繰り返しで楽しい時間はあっという間に過ぎた。

時間は午後10時を回っていたが太陽はまだ沈んでいなかった。

日を跨ぐ頃にTorbはガンタッカーと馬鹿でかいフライヤーを持って街へと繰り出す。

彼は木製の壁を見つけると、貼ってあるポスターや張り紙の上からガンタッカーを打ちまくっていた。周りの草やパイナップルなども一緒に打ち付ける。邪魔なフライヤーは根こそぎ剥ぐ。そしてまた打ちまくる。サウンドシステムはラジカセに変わっていたが、流れてくる音は相変わらず聴いたこともない、だが心地いい8ビートだった。街中をそのどデカいフライヤーで埋め尽くしながらその夜は更けていった…

…会場に着くと、そのスケートパークではレゲエで使われるようなサウンドシステムからレアグルーブが流れ、ボウルのボトムはbboyで埋め尽くされていた。スケーターが1人もいないボウルを見たのは後にも先にもこれだけである。サイファーに入ると靴とコンクリートが擦れる音がやけにはっきり聞こえた。

端の方ではタトゥーだらけのおっさん達が楽しそうに子供達にスローアップをレクチャーしていて、子供達もこれまた嬉しそうにフレッシュなオモチャで壁をくっちゃくちゃにしていた。

時たま鼻をかすめるBBQとWeedとスプレーの匂いがパーティに色を添えていた。

会場の雰囲気に気持ちが高揚し、サイファーを続けているとPoland勢からCall outを受ける。

ここで初めてArczekと会うことになる。

Torbの選曲で30分ほどやり合って、ビールを飲んだ。

この出会いが2017年の日本でのアクションに繋がってると思うととても感慨深い。

程よい疲れの中で僕たちは会場を後にし、次のパーティーへと向かった…

…アフターパーティーは船の上だった。

怪しい船着場から階段を伝って船に入る。

デッキでは深夜2時の夕焼けが踊り疲れたプレイヤー達を優しく包んでいた。

中に入ればまだパーティーの熱気は続いていて、三つほどのサイファーができていた。

僕はflooxと共に両サイドに設置されたテーブルに腰かけた。

やつが盗んで来た酒でしこたま飲み、

数十分後にはデッキで泥酔したflooxが吐きながら寝ているのが見えた。

それを見ながら笑っていた瞬間を、僕は大学時代に飲み明かした朝方の新宿に重ねていた。

あの日はここにリンクしていて、愛すべきアホがここにもいたことが純粋に嬉しかったし、船上パーティーっていうブルジョワじみた場所でここまでなれるflooxはイケてた。

ホテルまでの帰り道はHaikuさんと田我流のゆれるを歌った。

深夜4時にはもう辺りは白み始めていて、パーティの終わりが近づいていることを報せていた…

…帰り道のNSBの車中、旅の始まりで出迎えてくれたグラフィティ達は今度はぼくらを送り出す。

車窓から見える広大な自然を見ながら今回の旅を頭の中でなぞっていた。

レアグルーブが喋るビデオ、Torb、現地のbboy・bgirl、ムンク、Ekebergの丘、ホテルの近くのスタジオ、美術館、図書館、物乞い、モノリッテン、大体タトゥーが入ってるパンピー、たまたまやってたバトル、ガンタッカーで打ち付けられるポスター(とパイナップル)、スケーターのいないボウル、料理が美味いマウス、ポーランドのみんな、Arczek、Floox、Haikuさん、オスロ、RealDeal、BoatFunk、レアグルーブ、、、

どこに行っても思うことだけど

百聞は一見にしかず、という言葉が示す通り

感じ方は人それぞれ違っていて同じ景色を完璧に共有はできない。

「本当の言葉、人任せにはできない」

イヤホンから流れていたこの言葉だけ、妙に鮮明に聞こえた。

良くも悪くも自分で感じなきゃ何事も本質は見えてこない。

ググったことをボースティングするやつの言葉には注意してほしい。

メディアは思った以上に情報操作が多いし、都合の悪いことをハイプで覆い隠してくる。

気になったらなんでも見に行ってしまうべきだと思う。

これを読んで行きたくなってしまったあなたはもうチケットを取ってしまって欲しい。笑

オスロ、RealDealは好き勝手やることに妥協しない、自由という言葉に責任を持って遊んでるような最高な場所だった。

またいつの日か、必ず。

※あとがき

先輩の実家でホームビデオを見ていた。

オーストラリアへの長期旅行の際のクリップだった。

ビデオの中で彼はこんなことを言っていた。「一つのことを続けていればステキな出会いが待っている」

僕にもそれを感じられる瞬間がいくつもあった。

行動する、ということ。

考えないでやってしまうこと。

振り返った時には色んな出会いがあって、

最高の宝物になっていった。

泣きたくなるような別れも沢山あるけど

その分人間として厚くなれた気がした。

また会う日を夢見て今日も続けるstruggle。

一段上のステージで会えるように。

チャンスに備えて今日も続けるstruggle。

次のステキな出会いを求めて。